おばあちゃんとオンライン・キルト  第1話 第3/4回

第1話:宇宙船地球号の非日常

第3回 裁縫

<<届いたキルト>>

 2週間後、おばあちゃんから小包が届いた。中にはキルトが入っていた。ショーで壁にかかっているのを見たことはあるが、作成途中のキルトを手に取ってみるのは初めてだった。私たちが貼り付けたハギレも周囲が丁寧に縫われており、貼り付けたようには見えなかった。おばあちゃんが言っていたように薄い綿が入り、薄い座布団のよう。裏側を見ると、裏地もあるが、綿が見えているところもあり、縦横に大きな間隔で縫われており、ちょうどビルに工事現場の足場がかかっているように思われた。また、A4版2ページほどの資料が入っており、裁縫のやり方が図入りで書かれていた。その他、ビーズや黄色の糸が入っていた。次の日、おばあちゃんと、テレビでお話をした。

挿絵1:届いたキルト(全体と細部:刺繍、貼り付け部、キルトライン) ※クリックすると拡大できます。

 「おばあちゃん、キルトありがとう。作成途中のキルトを見るのは初めて。工事現場みたいで、びっくりしちゃった。」「そうだよね。ヨコちゃん、びっくりするよね。あれは躾糸といって、キルト綿と上下の布がずれないようにしているんだよ。簡単なメモリアルキルトと思っていたのが、大作になりそうで楽しみだね。」

「おばあちゃん、四隅の刺繍がきれいだね。土星と輝いている星のマークかな!」「あら!気にいってもらえた様ね。刺繍は綿を入れる前に入れるものなの、だから、縁を付けて刺繍を入れたのよ。」「そうなんだ!」いろいろなやることと順番があることに驚いた。

「さて、ヨコちゃん、資料が入っていたでしょ。おじいちゃんが作ってくれたんだけど、私も大変だったんだから、よく読んでね。じゃ、先ずはキルトラインということについて説明します。キルトラインというのは、綿を入れた後に凹凸をつけるためにする飾りのことよ。説明のために躾糸以外に一箇所だけ入れておいたんだけど、分かる?」そう言われれば、下の絵のおじいちゃんの横のハートの周辺だけに二重の縫い目が入っていて、凹凸がついていた。「下の絵のおじいちゃんの横のハートね。」

「そうよ!こうすれば、ハートがくっきりとするでしょ。これが、キルトライン。そして、キルトラインを入れたものが本当のキルトになるのよ。」

えー!キルトって、これがキルトじゃないの?「おばあちゃん、ごめんなさい!意味が分かりません。」「ヨコちゃん、ごめんなさい。綿を入れた後に刺し縫いで凹凸を付けることをキルティングっていうのよ。キルトはキルティングをしたもののことよ。だから、刺し縫いで凹凸を付けていないものは、キルトって呼ばないの。最近、キルトって何なのかを考えていて、キルトが何かのお話をしたかったんだけど、まだ、貴方にお話ししても難しかったわね。ごめんなさいね。ヨコちゃんにやってもらうことは2つよ。お花の中央部のビーズ刺繍と星の部分を縫うこと…」後は資料に沿って、詳しく説明してくれたので、良く解った。

<<五弁花>>

 ヨコちゃんは資料を見ながら、おばあちゃんの言葉を思い出していた。「お花の中央にビーズを縫って下さい。バラの雄蕊はたくさんあって、円に近い形に縫えばいいと思うの。縫い方は自由、任せるから。ビーズを縫う楽しさを味わってみてね!」しかし、学校の授業で教わったのは、花びら5枚の五弁花は、雌蕊が1つ、雄蕊が5つであったので、それで縫い方を考えることにした。ところで、もう1つ気になることがあった。それは、おばあちゃんが見本として入れてくれたキルトラインは波縫いで、キルトラインが波縫いでできるのであれば、ヨコちゃんでも出来ると思うのであった。そこで、花の中央の縫い方を決めてから、おばあちゃんとテレビでお話をすることにした。

「おばあちゃん、花の中央の縫い方を決めたので、見てもらおうと思います。お母さんに送ってもらった図を見て下さい。」おばあちゃんが送ってくれたビーズは、金色で6mmの長さのあるものだった。

挿絵2:花の中央の縫い方

「おばあちゃん、理科で花びら5枚の五弁花は、雌蕊が1つ、雄蕊が5つと教わったので、中央の五角形が雌蕊で、外側が雄蕊5つです。これでどうですか?」「いいわね!理科でいろんなことを教わるんだね。ところで、五角形の方を最初に縫って、目立たない様であれば、雄蕊のところは、縦に並べて二重にした方がいいかもしれないわね。6mmの竹ビーズだから大丈夫だとは思うけど。」

「おばあちゃん、ありがとう。そうします。ところで、質問があります。おばあちゃんが、キルトラインの一例で縫ってくれたのをよく見たら、波縫いに見えたのですが、あれは波縫いですか?」「あらら!よく見てるのね。そうよ、波縫いで縫ったのよ。」「おばあちゃん、波縫いだったら私にも出来ると思うの、下の絵のおばあちゃんの両側の菱形とハートマークの周辺をおばあちゃんが縫った様に縫いたいの、いいでしょ!」「ヨコちゃん、縫い方は波縫いだけど、雑巾を縫う様に針を斜めに入れてはダメなの、布に対して垂直に針を入れていかなければ綺麗なキルトラインにはならないのよ。」「判ったわ!おばあちゃん、1針ずつ入れていけばいいのね!菱形の方だけやってみるから、それを見て下さい!」

「そんなにやってみたいのなら、菱形だけね。1針ずつだと大変だからおばあちゃんの針目よりも間隔を2倍くらいにしても良いからね。ただし、強く引っ張りすぎてはダメよ。おばあちゃんのと差ができちゃうでしょ。見た目、おばあちゃんのよりも少し強めくらいにしておくと後で慣れてくるのよ。」やはり、色々なコツがあるようだ!「張り方が大切なのね。強すぎないようにやってみます。」

「ヨコちゃんの針目を残しておくのも記念になるわね!」「おばあちゃん、ありがとう。縫い物をやってみたかったの。一目一目、大切にやってみます。」キルトラインもやれることになり、嬉しかった。

<<縫い方を見てもらう!>>

 縫い物の前に縫うところを鉛筆で印を入れた。お花の中央部はビーズの長さが6mmなので、思ったよりも小さく、難しかった。菱形は、おばあちゃんのハートと同じくらいの間隔を離して印を入れた。そして、お花の中央部から縫い始めた。印を入れたところに針を持ってくるのが大変だった。まず、布を3枚貼り合わせているので、すごく硬かった。しかも、探っていると、針で指を刺しそうになった。しかし、ビーズの存在感は絶大で、1つ取り付けると達成感を感じることができた。次は菱形のキルトラインに取り掛かる。おばあちゃんは、自分の2倍の間隔で良いと言ったが、おばあちゃんと同じ間隔に揃える様に努力した。10cm足らずの長さであったが、一目一目縫っていくと2時間ほどかかってしまった。お母さんにお願いして、次の日おばあちゃんに縫ったものを見てもらうことにした。

挿絵3:花の中央部と菱形の裁縫 

「ヨコちゃん、ご苦労様。お母さんが写真を送ってくれたけど、縫ってみてどうだった。」「おばあちゃん、ゴメンなさい!思ったようにはならなかった。綺麗な五角形は出来ないし、菱形のキルトラインも不自然な歪んだ線になってしまいました。本当にごめんなさい。」ヨコちゃんは、思わず泣き出しそうになった。

「あらあら!ヨコちゃん、そんなにしょげないでね。お花の方は凄く味があっていいわよ!菱形の方は、左上から縫い始めたと思うんだけど、私が1針1針と言い過ぎたので、同じところに針を戻したようね。しかも、強く引っ張り過ぎたので、歪んだのね。その後は綺麗なキルトラインで菱形が立体的になっているわよ。縫い物は楽しかった?」

「凄く楽しかったわ。ビーズは凄く存在感があるなって、思った。キルトラインの方は、入れるとキルトに立体感が出て、レリーフの様になっていくのね。おばあちゃんが言っていたキルトラインを入れないものはキルトと呼ばないと言う意味が良く分かりました。」「ヨコちゃんにキルトの良さが判ってもらえて、私も凄く嬉しいわ!レリーフ、そうよ。キルトはレリーフの立体感を目指しているのよ。」おばあちゃんが凄く喜んでくれたので、ヨコちゃんも嬉しかった。

「ヨコちゃん、学校の方が大丈夫だったら、下の絵のハートの周りも同じように波縫いでやってね。」「おばあちゃん、ありがとう。学校は大丈夫だよ。」さらに裁縫ができることになり、ヨコちゃんは喜んでいた。

絵を入れたキルトを作成してみませんか。

<<第4/4回に続く>>

以上で第3/4回は終了です。次回はキルトがいよいよ完成します。楽しみにしておいて下さい。 なお、この物語はあくまでもフィクションです。

おばあちゃんとオンライン・キルト  第1話 第4/4回 完結
小説「おばあちゃんとオンライン・キルト」の第1話 第4/4回です。

第1話 第1/4回を読みたい方は、次を参照ください

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