おばあちゃんとオンライン・キルト  第1話 第2/4回

キルト

第1話:宇宙船地球号の非日常

第2回 ヨコちゃんのデザイン

<<ヨコちゃんのデザイン>>

ヨコちゃんには、ガールスカウトで聞いて、気になっていたお話があったので、次の日にはデザインが出来上がりました。お母さんに説明したら、早いのね!と関心され、その次の日のテレビで説明することになりました。

挿絵1:ヨコちゃんの考えたデザイン

「おばあちゃん、説明します。絵は見えますか?」「大丈夫よ!お母さんが、昨日、写真をメールで送ってくれたから。」「元になるお話は、ガールスカウトで聞いた地球環境のお話です。何十億年も前に地球が生まれ、土、水、太陽の光があって、そこに緑が生まれました。それに合わせて台の色は土色、水色、緑色、太陽の赤にしました。緑は太陽と土・水の間に生まれるので、順番は、この順です。形は、土の結晶、水の渦巻、緑からお花、太陽の星にしました。おばあちゃん、どうですか?」「パチパチ!パチパチ!素晴らしいわ。5年生って、凄いのね。私が5年生の時は、そんなことを考えていたかしらね!ヨコちゃん、もう1つお願いがあるわ、キルトは絵の外側に5cm幅で縁取りを付けるの。その色は何にしたらいいと思う?何か良いアイデアがあれば、言ってみて。」「外側の縁?」「そうよ。2つの絵があるでしょ、その外側に縁を付けるのよ。」「地球の外側だから、宇宙でしょ。だから、黒はどうかしら?」「黒はキルトでは、あんまり使わないのよ。」そこにおじいちゃんが割り込んできた。「良いねぇ!宇宙の色というのは、黒じゃないんだよ。濃い青色、鉄紺か褐色(かちいろ)を使うといいんじゃないかな。それとキルトの題名は『宇宙船地球号の非日常』というのはどうかな?アフターコロナに向けていいかもしれないね。」「宇宙オタクの貴方には、嬉しい話題だったようね!」とおばあちゃんが答えた。おじいちゃんもお話を聞いていたとは知らなかったが、おじいちゃんが宇宙ファンで、おばあちゃんのキルトは「銀河のキルト」という題名で、おじいちゃんのお話しから考えたものだという話を授賞式の時に聞いたのを思い出した。

おばあちゃんから話が続いた。「宇宙の色は濃い青色にすることにしようね。ヨコちゃん、ありがとう。こんなに早くデザインができるとは、思わなかったわ。おじいちゃんのアイデアでキルトの題名まで決まったようね。さて、次は、実際に作業よ。絵のある布地を見て、絵と絵の間に薄く正方形が書いてあるでしょ。これにうまく当てはまるように色を選んで置いてみて。」おばあちゃんに言われた通りにハギレを取り出し、色を選んでおいてみる。「ちょうど、土色も入れておいたから、大丈夫だと思うけど、ヨコちゃんが考えていた色がありますか。」「大丈夫、土色、水色、緑色、赤色は綺麗な良い色です。」「良かったわ。だったら、先ずは、この4枚のハギレにノリを多めに塗ってから貼って下さい。貼ったら、平らなところにおいて重そうな本をおいてシワにならないようにしてね。お母さん、布とハギレをシワのないように裏からアイロンしてやってね。」「ハイハイ!やっぱり手伝うことになるのね。」母が答えた。

「ヨコちゃん、その後、布をすぐ切ってはダメよ。良さそうな色の折り紙で形を作るのよ。それを貼り付けたハギレの上に置いて確認するのよ。大きさが大切だからね。置く場所と大きさを変えてやってみると、これが良いというのが判って面白いのよ。」「へえ、そうなんだ!」おばあちゃんが、いつもデザインをどんな感じで作っているのかが分かり、面白かった。

「ところでヨコちゃん。水の渦巻の形は、手書きでクチャとしてるけど、大丈夫ですか。」と、おばあちゃんから痛い質問があった。「うん、上手く描けなかったけど、考えてみます。」と答えると、「ヨコちゃん、困ることがあったら、相談してね。」「ありがとう。言われたようにやってみるからね。」と答えた。なお、母には、おばあちゃんからやり方の説明をまとめたものがメールで送られてきていて、見せてくれた。

<<やっぱり相談>>

先ず、言われたように4枚のハギレは、母の協力もあり上手く貼り付けることができた。次に折り紙で形を作ってみる。渦巻き以外は納得できる形になったが、渦巻きは、まともな形を作ることもできない。父に相談すると韓国国旗の中心のマークや四方から線が中央に集まるマークなどを提案してくれたが、ヨコちゃんのイメージではなかった。そこで、やはり、おばあちゃんに相談することになり、母が連絡してくれた。

「キルトを作るためにヨコちゃんと会議ができるなんて、本当に楽しいわね。今度はおばあちゃんが説明します。」ヨコちゃんが言葉を遮った。「おばあちゃん、ごめんなさい。おばあちゃんの考えてくれた絵を見たんだけど、同じものをパパが提案してくれていて、四方から線が中央に集まるのは、あんまり好きじゃないの。」おばあちゃんの顔が凍りつきそうなところで、おじいちゃんの助け舟が入った。「おばあちゃん、その形はヨコちゃんのイメージではないかもと言った通りだろう。グルグルのイメージがいいんだよね。ヨコちゃんは?」「おばあちゃん、ごめんなさい。」「大丈夫だよ。私が説明するよ。ヒントはこれだよ!」おじいちゃんが取り出したのは蚊取り線香。「7.5cmの正方形だから、中心の直径6cmぐらいで折ってみる。それを水色の折り紙の上に置いてみるよ。蚊取り線香だから緑色だけど、群青色だと思ってみてね。これでも1周半ぐらいしているので、グルグルの感じは残っているね。」「おじいちゃん、ありがとう。でも、これを描こうとしても描けないの!」おじいちゃんが続けた。「ヨコちゃん、この蚊取り線香を型にすれば良いんだよ!布の裏側に蚊取り線香を置いて鉛筆で直接線描きすれば、型が取れるよ。ところでおばあちゃん、この形でキルトになるのかな?」「それは問題ないわ。」とおばあちゃんが答えた。「おばあちゃん、ごめんなさいね。子供は思った通りに言うから…。」と母がおばあちゃんに謝っていたが、とにかく形が出来そうで良かった。

<<渦巻、出来ました!>>

アースノーマットしか使っていなかったので、蚊取り線香を1箱買ってくることにはなったが、思ったよりもスムーズに進んだ。先ず、おじいちゃんから言われたように蚊取り線香の中心部を最大6cmの直径になるように折り、それを貼り付けた空色のハギレの上に置いて形を確認し、色々な向きにおいて方向を決めた。なお、父が水の渦巻の方向は日本のある北半球では反時計回りということを調べてくれたので、方向を間違えないようにした。

挿絵2:布の裏に蚊取り線香で取った型

次に4つの形を、ハギレの裏に描き、渦巻以外はハサミで直接、切ることができた。渦巻は紙に写してハサミで切ってみたが、上手くいかなかったので、カッターで切り出すことにし、どうにか納得できる形にすることが出来た。台のハギレの上で置き方を確認してから、のりを多めに塗って、貼り付けた。渦巻以外は簡単であったが、渦巻はひょろひょろと動くので、表の面をセロテープで十字に止め、形を固定してから裏返し、のりをつけ、台布に貼り付けた。貼り付け終わって、ほっとしたら甘い苺の香りがして、のりの香りであることに気が付いた。平らな面に置き、上から本を置いてシワにならないように乾かし、その次の日に、おばあちゃんとテレビでお話しすることにした。

<<完成!?これで終わっちゃうの?>>

挿絵3:完成したキルトトップ:全体と中央部

 「おばあちゃん、出来ました。渦巻はおじいちゃんが言ってくれたようにして、綺麗に出来ました。渦巻の向きは日本では反時計回りですが、オーストラリアなどでは時計回りなので、こちらの方がかっこいいと思ったので、このようにしました。」「ヨコちゃん、ありがとう!渦巻の向きまでちゃんと考えてくれていたんだね。すごいね!さー、それを送ってくれたら、キルトにするから楽しみにしておいてね。本当にありがとう。ヨコちゃん、作ってみてどうだった?」「おばあちゃん、すごく楽しかったよ。デザインを考えるというのが、全体のお話しから始まって、それに合わせて色や形を決めていくというのが、面白かった。」

「それは良かったね。私も楽しみだわ!後はどうするか、いろいろ考えているのよ。」「おばあちゃん、私はもうやる事ないの?家庭科の宿題で雑巾作りもちゃんとやって、裁縫も面白いと思ったの。」「雑巾ね!貴方にできることね?!…」

 おばあちゃんが困っていると、おじいちゃんが助け舟を出した。「おばあちゃん、これから貴女がやることを挙げていって、ヨコちゃんにできることがないかを考えれば良いんじゃないの!」「そうね!先ず、縁をつけて、キルト綿を入れて、裏地をつけて、キルトにするの。ここでヨコちゃんにできることは?ちょっと無理ね。それからデコレーション。ここならあるわね。例えば、お花の中心部にビーズを着けるの!テクニックはなくても、それなりにできるわね。最後はキルトライン、これは厚みのあるキルトに糸で引っ張って凹凸を付けて立体感を出すのよ。例えば、キャンプファイヤーの上に星があるでしょう。そこの立体感を出すのに、裏から針を入れて、戻して玉留めすれば良いのよ。それなら出来るわね。」「おばあちゃん、裁縫はしないという約束だったのに…」母が文句を言っていたが、私の出来るところをやらしてもらえることになった。完成したキルトの布地をおばあちゃんに送り、次はどんな裁縫ができるのか楽しみである。

絵を入れたキルトを作成してみませんか。

<<第3/4回に続く>>

 さて、ヨコちゃんはどんな裁縫をできるのでしょうか?お楽しみにしてください。なお、この物語はフィクションです。

第1話 第1/4回を読みたい方は、次を参照ください

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