幾何学の視点から見るキルトのデザイン 第8回「幾何学デザインをもっと自由に」 

要旨:今回は「幾何学デザインをもっと自由に」と題して、これまでに作成したキルトの中で説明していなかった配列について紹介します。そして、それらとこれまでに説明してきた配列を統合して、いろいろな多角形がつながりながらメタモルフォーシス(変容)していくキルトデザインに挑戦します。

これまでに説明していなかった配列について紹介

 それでは、まず、これまでにコラボレーションで作成したキルトの中にある説明していなかった配列について図1から図5で紹介します。

図1:大きさの違う正三角形2種類を使ったキルト

図2:大きさの違う正三角形3種類を使ったキルト

 図1と図2は大きさの違う正三角形を使ったデザインです。図2は大きさの違う正三角形3種類を使っています。3種類の大きさの違う正三角形を使って配列させる場合は、小さい2種類の辺の長さを足したものが大きな正三角形の辺の長さになるようにすれば、図2のようにうまく配列を作ることができます。図2の場合には、1+2=3の比率になっています。例えば、1+1.4142…=2. 4142…でも大丈夫です。この場合、精密な六方格子にはなりませんが、この配列だけを使うときは問題になりません。あなたの最適と思う比率でデザインしてみると面白いでしょう。

そして、図1は1+1=2、3種類の大きさの違う正三角形を使って配列させる場合に、小さい2種類の辺の長さを同じものとし、その2倍の大きさの正三角形、つまり、2種類の正三角形を使って配列させたと考えると判りやすいでしょう。なお、4種類以上の大きさの違う正三角形を使った配列は、これと同じ形ではできません。つまり、別の配列方式であれば、4種類以上の大きさの違う正三角形を使った配列も作ることができますが、図2のような形式には出来ません。

図3:正六角形と正三角形の風車

図3は正六角形と正三角形の風車的な配列で、風車がかっこいい様に正六角形の辺を1として、正三角形の辺の長さを3にしています。この配列は非常に面白く、正六角形と正三角形の大きさがいかなる場合でも成り立ちます。想像しにくいので、図4に補足図を示しました。

図4:正六角形と正三角形の風車的な配列の補足図

 図4で正六角形の辺の長さを1とすると、正三角形は左から3、1、1/2になります。正三角形が小さい場合でも面白い配列になります。自分の好きな比率にできるので、いろいろなデザインが出てきます。是非、使ってみてください。

図5:正六角形と正三角形を組み合わせた五角形のある配列

 図5は正六角形と正三角形を組み合わせた五角形のある配列を使ったデザインです。正六角形7個を組み合わせて花を表していますが、その形を6等分した形が五角形になります。外形は同じなので、うまく配列でき、それを利用した配列です。そのことが分かれば、この配列の面白さがわかっていただけると思います。また、出来た五角形も立て爪のダイヤモンドを思わせる形で、葉っぱに見立てると4つ葉ならぬ6つ葉のクローバーになり、楽しめます。

図6:正方形と直角二等辺三角形を組み合わせた五角形のある配列

 図6を正方形と直角二等辺三角形を組み合わせた五角形のある配列を使ったデザインです。正方形5個を組み合わせて花を表していますが、その形を4等分した形が五角形になります。外形は同じなので、うまく配列でき、それを利用した配列です。つまり、図6は図5の正方格子の場合と考えると良いでしょう。

 次に図1から6とこれまでに紹介した配列など多くを使い、メタモルフォーシス(変容)していくキルトのデザインに挑戦します。

 

エッシャー「メタモルフォーシスI」について

図7:エッシャー「メタモルフォーシスI」

参照:http://blog.uwabami.jp/entry/2018/06/13/174614

 図7は、エッシャーの作品の一部で、実際は図6の4枚分がつながった横に長い作品です。

 変容とは図7にあるように形が変わりながらつながっていくデザインとお考えください。なお、筆者のデザインは幾何学デザインですので、無理な変形がなく多角形がつながっていくものです。

変容を用いた壁画キルトのデザイン

 大きな配列イメージとしては、正三角形と正方形が中央の直線で接しており、横につながっていくのですが、その中で正六角形や、直角二等辺三角形と正八角形などに変化して行きます。従って、出てくる多角形は正三角形、菱形、正六角形と正方形、直角二等辺三角形、正八角形、そして、それらを組み合わせてできる五角形です。

 実際に形を配置してデザインしたものが図8です。

図8:メタモルフォーシス「分断」

 図8は「分断」というタイトルで作成した図案で、縦を1mとすると長さ6mの壁画キルトになります。横長で細部が見にくいので、図の中下段に左右 半分ずつを表示しています。ストーリーとしては「正三角形と正方形の世界は隣り合うことはできても、分断され決して相入れることはない。正方形の世界では長い間、動乱が続いたが、中期以降、正方形が直角二等辺三角形や正八角形に進化し、独自の花を咲かせている。一方、正三角形の世界では、元々の美意識が発揮され、正三角形が、菱形や正六角形に進化しながら、華麗に繁栄する。両者はそれぞれ発展すればするほど、分断はさらに深まっていく」というものです。発展は良いことですが、分断された社会では、発展することは分断がますます大きくなることを意味します。そして、その違いが文化のレベルまで達した時、分断が決定的なものとなるのです。例えば、このデザインで言えば、左右で配列方法に大きな違いがあることは一目瞭然です。この様な配列方法という形式美の違いが文化の違いを象徴しているのです。

冷戦を乗り越えたはずの人類が違う形での分断に、今また入ろうとしていることを思い起こして頂きたいと思い、このようなタイトルにしてみました。

なお、基本となる正三角形と正方形の1辺を3cmで取ると縦1mとなります。そして、縦を1mとすると長さ6mの壁画キルトになります。コラボレーションキルトとして作成すれば、面白いのではないでしょうか。非常に横長の壁画キルトですが、グループで正確に作成する方法を考案しました。1名が1mを担当するとして6名以上のグループでコラボ作成に挑戦したいという方は下のフォームでご連絡ください。


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    ところで図1から6の配列が図8のどこにあるか、また、これまで御紹介してきたいろいろなパターンも散りばめていますので、見てください。

    参考文献

    中村健蔵2019『パッチワークキルターのための幾何学デザインシリーズ 幾何学で進化するキルトデザイン』楽天Kobo・キンドルDP 

     

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